マリリンの出演作『王子と踊り子』の助監督を当時務めていたコリン・クラークの回想録をもとに映画化。撮影地イギリスを舞台に、周囲の重圧に押しつぶされそうなマリリンと、彼女にアドバイスをしつつ惹かれていくコリンのロマンスを描く。監督はサイモン・カーティス。
マリリンを演じたミシェル・ウィリアムズは本作でアカデミー賞主演女優賞に、ローレンス・オリヴィエを演じたケネス・ブラナーは助演男優賞にノミネートされた。
オードリー・へプバーンよりマリリン派の私には不安もあったが、美しくピュアな作品に仕上がっていた。プレッシャーで情緒不安定に陥ったマリリンは撮影現場に毎回遅刻。常識派で厳格なオリヴィエは、彼女に付き合いきれずイライラを募らせるが、その苛立ちは彼女への抗いがたい魅力に対し、自身と懸命に闘っている姿でもある(さすがに彼の妻であるヴィヴィアン・リーはそれを見抜いている)。
演技に対する価値観の違いでマリリンとオリヴィエがぶつかるシーンも面白い。どんなに周りに迷惑をかけようが、オリヴィエを含むスタッフ全員、マリリンには演技以前に天性のオーラがあり、それが否応なしに人を惹きつけることを”身をもって”理解していく。
コリンとマリリンの恋は本当に淡いものであるが、周囲の人間が2人の様子を彼らなりに心配しているところにも注目したい。壊れそうなほど繊細なマリリンは、恋より愛を求めようとするが、欲望に忠実な男たちは必ずしも彼女の想いに応えられない。しかしコリンは、そんなマリリンの心を満たした数少ない男性の一人だったのかもしれない。
演技派ミシェル・ウィリアムズはマリリンに似ているとは言えないが、話し方、視線の使い方からそのデリケートな心情まで、極限にまでマリリンに近づいている。映画撮影の舞台裏も面白い。
(池辺麻子)
マリリン 7日間の恋
2011年 イギリス/アメリカ映画/監督:サイモン・カーティス/出演:ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ドミニク・クーパー、ジュリア・オーモンド、ゾーイ・ワナメイカー、ダグレイ・スコット、エマ・ワトソン、ルーシー、ジュディ・デンチ/配給:角川映画
2012年3月24日より、角川シネマ有楽町他全国ロードショー
公式サイト http://www.marilyn-7days-love.jp/